介護する側で
知っておきたい知識

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1.はじめに

わが国の平均余命が毎年延びており、高齢者となって介護状態となるリスクがますます高まることが予想されます。ライフプラン上のリスクとして、自分の親、収入の担い手、配偶者が介護状態となったときの経済的な負担があります。今回は介護する側で知っておきたい、介護のお金に関する知識について解説します。

2.介護離職の現状

「平成29年雇用動向調査」によれば、2017年中に介護・看護を理由に離職した人は約9万3,000人にのぼります。介護離職者の性別では、男性約3万6,000人、女性約5万7,000人で、全体の約60%を女性が占めています。
40歳代頃から就労している人が親族の介護を行うケースが増え、介護離職が改善されていない現状がうかがえます。また、一度介護離職するとなかなか再就職することができない厳しい現状もあります。現在の生活を守るため、また自分自身の老後の生活を考えた場合、収入が途絶える介護離職は、可能な限り避けるようにしたいものです。

3.介護離職を防ぐ制度

(1) 介護休業
要件を満たす労働者は、対象家族1人につき3回まで、通算93日を上限として取得することができます。対象家族1人につき、要介護状態ごとに3回まで分割取得できます。対象家族の範囲は、配偶者、父母、子、祖父母、兄弟姉妹、孫、配偶者の父母です。同居や被扶養者であるという要件はありません。要介護状態の要件は、負傷、疾病または身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上常時介護を必要とする状態となっています。
(2) 介護休業給付金
前記の介護休業を取得した場合、雇用保険から介護休業給付金が支給されます。給付金の1日当たりの支給額は、「賃金日額×67%」です。この賃金日額とは、介護休業する直前6ヵ月分の賃金を180で割って算出します。介護休業期間中に事業主から賃金が支払われた場合は、その額に応じて介護休業給付金の支給額が削減・停止されます。

4.公的介護保険からの給付

(1) 公的介護保険から受けられるサービスの支給限度基準月額 2018年11月現在、要支援・要介護状態に応じて以下の通りとなっています。

この支給限度基準額について、所得区分により1割・2割・3割の割合で自己負担します。公的介護保険の支給限度額を超えて利用するサービスや、公的介護保険の対象とならないサービスは全額自己負担となります。
(2) 住宅改修・介護用具の費用補助
手すりの取り付けやバリアフリー等の住宅改修費は自己負担を超えた部分が、通算して20万円を限度に支給されます。排泄や入浴のための介護用具の購入費についても、自己負担分を超えた部分が、年度ごとに10万円を限度に支給されます。

5.公的医療保険からの給付

(1) 高額介護(予防)サービス費
1ヵ月単位の公的介護保険にかかる自己負担額が、利用者または世帯の所得に応じた限度額を超えたとき、その超えた金額が申請により高額介護(予防)サービス費として払い戻されます。例えば市町村民税課税世帯(現役並み所得者を除く)の場合、自己負担限度額は世帯で44,440円です。
(2) 高額医療・高額介護合算療養費
毎年8月から翌年7月までの1年間において、個人および世帯の公的医療保険と公的介護保険の自己負担額が、自己負担限度額を超えた場合、越えた額が申請により払い戻されます。例えば70歳以上の人のうち、現役並み所得者でもなく低所得者でもない一般所得者の場合、自己負担限度額は年額56万円となります。

6.さいごに

平成30年度の「生命保険に関する全国実態調査」(生命保険文化センター)では、公的介護保険を含めた自己負担額の平均は7.8万円、介護に関する初期費用(住宅リフォーム・介護用品の購入費用)の平均は69万円、介護期間は4年7カ月となっています。これらを合計すると、介護に必要な資金の総額は、500万円程度を想定することがポイントと言えます。自己資金で不足する資金を預貯金や保険商品で備えるとよいでしょう。