金投資のいろいろ
1.はじめに
金は希少性のある資産とされています。それは、採掘できるエリアが限定されていること、現在の埋蔵量が5.4万トン程度とされているためです。そのため、金の価値は一定の水準を保っており、特に世界的な政治・経済の混乱の際、「有事の金買い」として資金の避難先としても活用されています。最近の価格の動きとしては、2019年後半から急上昇しています。今回は金に投資する金融商品について解説します。
2.金投資の留意点
金の価格の変動要因は、需要と供給のバランスのほか、米ドル建ての価格で取引されることから、円安になると上昇、円高になると下落します。さらに、世界各国の政治・経済の動向、原油価格の動向等でも変動します。このように金の価値自体は一定の水準を保つものの、価格が変動する資産であるので、一度に多額の資金で購入するのではなく、毎月少しずつ購入する等の方法でリスクを軽減することが肝要です。 ここからは、金投資のいろいろについて、ワンポイントで解説します。
3.金貨・金地金
宝飾店や貴金属店で購入することができます。金貨はデザイン・加工に関する諸経費が上乗せされており、購入時・売却時に手数料がかかります。金地金は、いわゆる「金の延べ棒」です。
金貨は、金地金と比較すると小口で購入することになるので、一度にまとまった金額で購入する金地金よりもリスクは低くなります。ただし、手数料率は一般的に金貨の方が高くなります。いずれも盗難のリスクがあるため、それを防ぐために貸金庫を利用したりする等の場合は、そのためのコストがかかります。
売却時に所得が発生したら、譲渡所得として所得税・住民税の対象となります。その際利益から最高50万円を差し引くことができ、他の所得と合算して課税されます。所有期間が5年を超えると、その2分の1が課税の対象です。また、給与所得者は譲渡所得が20万円以下であれば、確定申告は不要です。
4.純金積立
貴金属店や銀行等の金融機関で口座を開設し、毎月決まった金額の金を定期的に購入するシステムです。一般的に3,000円から1,000円単位で積み立て可能なので、気軽に始めることができます。毎月購入する「ドルコスト平均法」により、買付単価を平均化し、金価格の下振れリスクを軽減することが期待できます。金額がまとまれば、金の現物に交換することも可能です。手数料体系は取扱事業者で異なります。取扱事業者の経営破たんにより、預かってもらっていた資産が返却されないリスクがある点に注意が必要です。税金については前述の金貨・金地金と同様です。
5.投資信託
投資信託の中には、金価格の指数に連動するように運用するものがあります。金の現物を手に入れることはできませんが、盗難の心配はありません。金価格の動きによる利益を得ることが可能です。取扱金融機関によっては積立投資が可能なところもあります。 譲渡益には申告分離課税の対象となりますが、NISAを活用すれば、運用収益が非課税となります(つみたてNISAでは、金単体の指数を投資対象とする投資信託は除外されています)。
6.ETF
ETFも投資信託のひとつです。前述の投資信託と大きく異なる点は、金融商品取引所に上場しているため、取引が行われている時間帯であればリアルタイムに売買できることです。価格が上昇したタイミングで売却すれば、その時点で利益を得ることができます(前述の投資信託の場合は、取引終了時の終値で売却価格が決定します)。
また、運用管理費用等の諸費用が前述の投資信託と比較して低廉となっており、保有のコストが軽減されます。その反面、積立投資ができない場合が多く、投資単位も前述の投資信託よりも大きい点に注意が必要です。もっとも、その点は投資単位ごとにこまめに時間分散を行いながら投資することで解消することが可能です。
税金は、前述の投資信託と同様です。
7.さいごに
金投資を行うことにより、株式や債券以外の投資先のバリエーションを増やすことができます。特性・コスト・リスクを把握して、活用を検討してはいかがでしょうか。